小さき者へ

a0002458_826610.jpg小さき者へ (文庫)
重松 清

サンデー毎日に連載されていたものを改稿した短編集です。どの話にも子供が出てきて、大人と子供の間にあるギャップが中心のお話たち。子供の問題に精通する重松さんらしい内容です。

『海まで』では家族で父親の実家へ帰省する。子供は2人兄弟。弟が生まれてからというもの実家の祖母は弟ばかりをあからさまにかわいがる。おまけに、兄とは違って弟もアピールがうまい。そんな祖母と夫婦と兄弟のやり取り。

『フイッチのイッチ』は主人公のクラスへ女の子が転校してやってくる。主人公も彼女の家も両親が離婚して母子家庭。そんな二人のやり取りと彼らから見た両親が描かれている。

文庫のタイトルになっている『小さき者へ』。息子が学校でいじめられたことがきっかけで、不良に転身。家でも学校でも荒れる。父親は相手にされない。そこで、毎晩息子へ手紙を書く。息子へは渡す踏ん切りがつかないのだが書き続ける。現在の家族の状況、自分が子供のころのこと。痛々しい話です。

『団旗はためくもとに』の父親は元応援団長。非常に硬派。しかし、娘には弱い。ある日、娘が高校をやめると言い出す。当然、父親は反対。そして、長い親子喧嘩になる。。。父親は今でもストレスがたまるとかわらに行って応援歌を歌ったり、歓送迎会ではエールをきったり。コミカルに描かれています。好き。

『青あざのトナカイ』は脱サラをして配達ピザ屋を始めたが1年半で経営不振で店をたたんでしまった父親が一人になりたいと妻と子供を妻の実家へ行かせ、浮いたり沈んだりしながら、立ち直っていく話です。

『三月行進曲』は少年野球の監督をやっているサラリーマンが家族に愚痴を言われながら、それぞれ少々問題のあるチームの卒業生3人を甲子園へ連れて行く話です。「もしも、、、」ということを常に考えてしまう大人の世界。子供がかけてほしい言葉と大人が言ってしまう言葉のギャップ。など、いくつかメッセージがちりばめられているように思いました。

暗い問題をたぶんに含んでいるし、ハッピーエンドとは限らないのだけれど(エンドがない?!)、ケースステディとしてありえる答えが示されているせいか、すっきりとした読後感です。どの話も登場人物、特に子供が生き生きと描かれていることが好印象です。
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by ikumuw | 2006-08-03 08:25 | books | Comments(2)
Commented by す~さん at 2006-08-13 11:05 x
初めまして。
この作品も重松さんらしさが出てよい本でした。
結末は読み手の感性次第ってところがいいですね。
全部ハッピーエンドにしても構わないし、
でも、現実はそう甘くもない気もしますが。
『海まで』の老母と息子の関係が切なかったですね。
Commented by ikumuw at 2006-08-13 18:47
コメントありがとうございます。
たしかに感性次第ですよね。初読のときは私はわりとネガティブにとらえました。2度目は他の結末もありえるなという感じ。こういう終わり方だと読むたびにも変わりますよね。


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