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寺田寅彦随筆集第二巻

寺田寅彦随筆集第二巻_a0002458_66312.jpg寺田寅彦随筆集第二巻
寺田 寅彦 (著), 小宮 豊隆 (編)

地球物理学者の寺田寅彦先生の随筆集の岩波文庫第二巻です。

「蓄音機」や「映画時代」は幼い頃はなかった蓄音機や映画が発明されて、どのように自分の生活に入ってきているかを述べ、これが社会にどう影響するのかと考察しています。広く解釈すれば新しいテクノロジーによる大衆娯楽に関するエッセイ。

「亮の追憶」は仲良しだった甥の一周忌に彼との思い出をつづったもの。亮は他のエッセイにも登場することがあります。

「一つの思考実験」はもし、日刊新聞がこの良からなくなったらというシミュレーション。寺田先生は新聞がお嫌いのようです。最低でも週刊で十分でしょうというようなことを言っていますが、他に情報メディアがなかった昔の時代では日刊新聞は必要でしょう。。。

「電車の混雑について」は混雑していない電車に乗るためにはどうしたらよいかという動機から電車の混雑状況を統計的に処理し、考察しています。理論展開は微妙な気がしますが、現代でも成り立つかな。。。

「相対性原理側面観」はアインシュタインのことなどが書かれているのですが、相対性理論を理解できる人は当時数少なかったわけですが、理解という概念も微妙で、後世、さらに先を行く研究者からみたらアインシュタイン自身も理解していたと言えるだろうか。という感じ。

「子猫」は飼い猫の話。他のエッセイでも猫の話はたくさんあります。ここでは、飼っている猫を観察しているとそれぞれ性格があり、それは生まれつきなのか、小さい頃の環境なのかということを考えています。

「二十四年前」は寺田先生が学生だったときにケーベルという音楽家に自己流で練習していたヴァイオリンを教えてほしいと押しかけた話。そして、そんな安物のヴァイオリンで良い音は出ないと笑われる。。。

「解かれた象」は長年鎖で拘束されていた象が動物園を引越したことを機に鎖から開放されたことが気持ちよいという話。その象は昔、人間に乱暴を働いたというが、本来乱暴を振るう正確だったのだろうか、それとも。。。と思いをめぐらす。

「伊吹山の句について」は芭蕉の俳句にある雪がよく降る伊吹山について、地球物理学的に考察をする。といってもそれほど専門的で高度なことを言っているわけではありません。

「路傍の草」「備忘録」「LIBER STUDIORUM」「時事雑感」は短編集で日記のような感じ。日々の生活で感じたことをつれづれなるままに書いています。

「怪異考」「化け物の進化」は未知のものを科学者としてどう認識するか、そういったものを物理学者として考察してみるというものです。昔は未知のものはすべて化け物と言ってきたが科学によって解明されてくると化け物ではなくなる。それはそれでさびしいな。という感じ。

「日本楽器の名称」「比較言語学における統計的研究法の可能性について」は楽器の名前や言語の類似性などから日本と大陸、はるかかなたヨーロッパまでの文化が実はつながっていると考えられるかもしれないという考察。

「ルクレチウスと科学」は昔々ルクレチウスという哲学者がいて、彼の科学的な考察はすばらしく、現代の科学の大部分を予測していると延々と語っています。それはすごいことは認めますが、ちょっとヒイキ目に解釈してませんか?

それにしても、いろんなことを考えるものです。随筆集はまだまだあるんですよね。。。もちろん、青空文庫で全部読めます。
by ikumuw | 2006-08-16 06:06 | books


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