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有限要素法

有限要素法_a0002458_18415279.jpg有限要素法
Jacob Fish,Ted Belytschko
山田貴博(監修),永井学志,松井和己(訳)

計算力学分野で二人を知らない人はもぐりでしょう!というほど著名なFish先生とBelytschko先生が書いた英語の教科書"A First Course in Finite Elements"を私も親交のある先生方が翻訳した有限要素法の教科書。

有限要素法に関する教科書は洋書では毎年,さまざまな本が出版されています。もちろん,和書でもいくつか見られます。和書としては,大学の教科書として書かれていたり,市販ソフトウェアのユーザーを対象とした実用的な視点から書かれたものがほとんどです。一冊で有限要素法の数学的背景から細部まで体系的に学べる日本語の教科書は見当たらないというのが実情でした。まあ,大学院生以上は洋書を読みなさいということでもあります。とはいえ,母国語で学ぶと効率的に学習できることは否めません。

手法としての有限要素法に言及した教科書の翻訳本としては,Zienkiewiczらの一連の著書があります。これらはバイブル的な存在ではありますが,現在では少々情報が古くなりつつある上,分量が多く(2冊に分かれていたりする),研究者でも手に取るだけで気が滅入ってしまいます。これに対して,本書は少々,文字は小さくなっているものの,ページ数も400ページ未満に抑えられており,教科書として標準的なサイズに収まっています。もちろん,数値計算手法としての有限要素法を応用数学の観点から"First Course"ではない内容まで体系的に学ぶことができ,理解を助けるための例題や章末問題も原著のまま豊富にあります(章末問題の解答は見当たらないのでたぶん訳者に問い合わせることになるんでしょうね)。特に,1章に書かれている有限要素法の歴史は必読です。また,本書の最大の特徴はABAQUS Student Editionが付属していることです。同じものを単体で購入すると1万円程度,本書を買えばほぼ同じ値段で教科書が付いてくる。

大学・大学院生から仕事で市販ソフトウェアを使用している人までレベルと用途に合わせて学べるので,有限要素法に関連する人は手元に一冊あると良いと思います。

なお,原著はいくつか誤植があったらしいですが,翻訳版は修正されているそうです。
by ikumuw | 2008-12-27 18:41 | books


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